わからないことだらけ

なんでもないこと

『代わりの者の星①』(定期創作話➀)

近年新しい惑星が発見された。

その名も《代王星》だ。

水星、金星、地球、火星、木星土星天王星海王星冥王星…《代王星》

研究者達がメディア社会の事を木で鼻を括る良い機会になっていた。その新しく発見された星には人間が棲んでいる事が発覚したからだ。

そして何よりも驚くべきことにそこに移住する地球人も出現し始めた。地球の世の中は地球人の無事を祈り定期的に惑星同士がやりとりをする法律を作った。

決まり事を増やすのは簡単なことだった。その新しく発見された星にはひとつ以外の法律が存在しないという事がわかったからだ。そのひとつの重要な決定事項は【特定微生物完全保護法】というものだった。それは代王星では発生(発現)する事の出来ない惑星外来種の微生物を保護し、徹底して保存するという法律だった。

その為かそこに住み始めた地球人は何やら不思議な法に守られることになった。彼(もしくは彼女)の体内に地球上限定の微生物が存在するからだろうか…。地球上では、誰もが目に見えないような事を気にするようになった。しかしそれがステータスにすらなっていった。

代王星に住み始めた人物(地球人a)には良く似た代王星人(代王星人a)が一緒に過ごすことになっていると報告があった。そして地球の研究所には食べ物や過ごし方、何から何まで同じ行動をすれば快適に生活ができるという研究結果が送られていた。

少しずつ地球人は代王星を羨望の対象にするようになっていった。なんせ彼等の世界には病が無いというからだった。地球の人間達は疑った。情報共有が行き渡っていなく隠蔽工作をする世界だと揶揄する人間も出始めたのだった。

そんな中、特定微生物について調べる地球人学者が食糧を地球人の為に代王星に送るという企業に加わることになった。そこでもまた地球からの贈り物は向こうのたったひとつの法によって過分に護(まも)られるのだ。学者達は気分が良かった。地球人は代王星を日に日に好きになっていった。

人々が惑星同士の交流に積極的になり始めた頃、地球人の食糧を代王星人が食べるという文化が拡がり始めた。パッケージには『地球人になれる!』と書かれていた。学者は考えた、微生物が好きなのか地球人が好きなのかはっきりしてくれ…と毎日考えるようになっていた。

学者には恋人が居た。その彼女は病気を患っており日々を噛み締めるように生きているようだった。(彼女が代王星に行けば病気は治るのか…?特定微生物と同じくらい大切にされるのか…?自分なんかと生きるよりも幸せではないか…。)目に見えないものを保護するなんて変わった発想だ。全ては水泡に帰すと言いたいのか、それとも病気を恐れているのか。代王星の人間の事がますますわからなくなった。

食糧を送る企画に関わっている訳だが、“こちら(地球)ではそちらにいる地球人の好きな食事やプライベートが丸分かりですよ”と言いたくなった。守られているからといって好き勝手やってればいいってもんじゃないんだ…。どこにいても人間は人間だ。横着なやつが幸せになどなれない。曜日感覚…向こうには曜日感覚はあるのか…?日にちは?あるんだろうなよくわからない文字で記したりするんだろうな、そりゃあ厳しい生活だろうとも思う大変だろう。

そう思いながらクレーム冊子を読む。……微生物…微生物…があいつの微生物はxy型だから地球人の食糧を食べない方が良い…?

そうか、体内の微生物が私達でいう血液型のようなものなんだな…。でもそうすると地球人が大量の微生物ごとやってくるなんて、侵略じゃないか…。まるでゾンビ…噛まれると感染る…なんて…、考えすぎだろうか。微生物を守るんだから、そういう惑星なんだから。もっと優しいよな。しかし地球人aと代王星人aは良く似ているな、笑ってしまうぞ…。

                                                       《②へ続く》

 

※この回はフィクションです。続きがありますが不定期開催となる為、気長にお待ちください。

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